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環境基本法(かんきょうきほんほう)は、日本の環境政策の根幹を定める基本法である。

環境基本法制定以前には、公害対策基本法で公害対策を、自然環境保全法で自然環境対策を行っていたが、複雑化・地球規模化する環境問題に対応できないことから制定された。 環境基本法の施行により、公害対策基本法は廃止され、自然環境保全法も環境基本法の趣旨に沿って改正された。
環境基本法は、日本の環境政策の根幹を定める基本法であり、環境基準の設定や環境基本計画の策定など具体的な施策に関する規定も含まれるが、その大半は施策の方向性を示すいわゆるプログラム規定で構成され、具体的施策は規定の趣旨に基づく個別の法制上および財政上の措置により実施される。

第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、環境の保全について、基本理念を定め、並びに国、地方公共団体、事業者及び国民の責務を明らかにするとともに、環境の保全に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに人類の福祉に貢献することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において環境への負荷とは、人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
2 この法律において地球環境保全とは、人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、海洋の汚染、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
3 この法律において公害とは、環境の保全上の支障のうち、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動、地盤の沈下及び悪臭によって、人の健康又は生活環境(に係る被害が生ずることをいう。
(環境の恵沢の享受と継承等)
第三条 環境の保全は、環境を健全で恵み豊かなものとして維持することが人間の健康で文化的な生活に欠くことのできないものであること及び生態系が微妙な均衡を保つことによって成り立っており人類の存続の基盤である限りある環境が、人間の活動による環境への負荷によって損なわれるおそれが生じてきていることにかんがみ、現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに人類の存続の基盤である環境が将来にわたって維持されるように適切に行われなければならない。
(環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築等)
第四条 環境の保全は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われるようになることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、及び科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨として、行われなければならない。
(国際的協調による地球環境保全の積極的推進)
第五条 地球環境保全が人類共通の課題であるとともに国民の健康で文化的な生活を将来にわたって確保する上での課題であること及び我が国の経済社会が国際的な密接な相互依存関係の中で営まれていることにかんがみ、地球環境保全は、我が国の能力を生かして、及び国際社会において我が国の占める地位に応じて、国際的協調の下に積極的に推進されなければならない。
(国の責務)
第六条 国は、前三条に定める環境の保全についての基本理念にのっとり、環境の保全に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(地方公共団体の責務)
第七条 地方公共団体は、基本理念にのっとり、環境の保全に関し、国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。
(事業者の責務)
第八条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、これに伴う環境への負荷の低減その他環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(国民の責務)
第九条 国民は、基本理念にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、国民は、基本理念にのっとり、環境の保全に自ら努めるとともに、国又は地方公共団体が実施する環境の保全に関する施策に協力する責務を有する。
(環境の日)
第十条 事業者及び国民の間に広く環境の保全についての関心と理解を深めるとともに、積極的に環境の保全に関する活動を行う意欲を高めるため、環境の日を設ける。
2 環境の日は、六月五日とする。
3 国及び地方公共団体は、環境の日の趣旨にふさわしい事業を実施するように努めなければならない。
(法制上の措置等)
第十一条 政府は、環境の保全に関する施策を実施するため必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講じなければならない。
(年次報告等)
第十二条 政府は、毎年、国会に、環境の状況及び政府が環境の保全に関して講じた施策に関する報告を提出しなければならない。
2 政府は、毎年、前項の報告に係る環境の状況を考慮して講じようとする施策を明らかにした文書を作成し、これを国会に提出しなければならない。
第二章 環境の保全に関する基本的施策
第一節 施策の策定等に係る指針
第十四条 この章に定める環境の保全に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、農地、水辺地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれること。
第二節 環境基本計画
第十五条 政府は、環境の保全に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全に関する基本的な計画(以下環境基本計画という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 環境の保全に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、環境の保全に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 環境大臣は、中央環境審議会の意見を聴いて、環境基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、環境基本計画を公表しなければならない。
5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
第三節 環境基準
第十六条 政府は、大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染及び騒音に係る環境上の条件について、それぞれ、人の健康を保護し、及び生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準を定めるものとする。
2 前項の基準が、二以上の類型を設け、かつ、それぞれの類型を当てはめる地域又は水域を指定すべきものとして定められる場合には、その地域又は水域の指定に関する事務は、次の各号に掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該各号に定める者が行うものとする。
一 二以上の都道府県の区域にわたる地域又は水域であって政令で定めるもの 政府
二 前号に掲げる地域又は水域以外の地域又は水域 次のイ又はロに掲げる地域又は水域の区分に応じ、当該イ又はロに定める者
イ 騒音に係る基準の類型を当てはめる地域であって市に属するもの その地域が属する市の長
ロ イに掲げる地域以外の地域又は水域 その地域又は水域が属する都道府県の知事
3 第一項の基準については、常に適切な科学的判断が加えられ、必要な改定がなされなければならない。
4 政府は、この章に定める施策であって公害の防止に関係するもの(以下公害の防止に関する施策という。)を総合的かつ有効適切に講ずることにより、第一項の基準が確保されるように努めなければならない。
第四節 特定地域における公害の防止
(公害防止計画の作成)
第十七条 都道府県知事は、次のいずれかに該当する地域について、環境基本計画を基本として、当該地域において実施する公害の防止に関する施策に係る計画を作成することができる。
一 現に公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域
二 人口及び産業の急速な集中その他の事情により公害が著しくなるおそれがあり、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難になると認められる地域
(公害防止計画の達成の推進)
第十八条 国及び地方公共団体は、公害防止計画の達成に必要な措置を講ずるように努めるものとする。
第五節 国が講ずる環境の保全のための施策等
(国の施策の策定等に当たっての配慮)
第十九条 国は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全について配慮しなければならない。
(環境影響評価の推進)
第二十条 国は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全上の支障を防止するための規制)
第二十一条 国は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講じなければならない。
一 大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染又は悪臭の原因となる物質の排出、騒音又は振動の発生、地盤の沈下の原因となる地下水の採取その他の行為に関し、事業者等の遵守すべき基準を定めること等により行う公害を防止するために必要な規制の措置
二 土地利用に関し公害を防止するために必要な規制の措置及び公害が著しく、又は著しくなるおそれがある地域における公害の原因となる施設の設置に関し公害を防止するために必要な規制の措置
三 自然環境を保全することが特に必要な区域における土地の形状の変更、工作物の新設、木竹の伐採その他の自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれがある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
四 採捕、損傷その他の行為であって、保護することが必要な野生生物、地形若しくは地質又は温泉源その他の自然物の適正な保護に支障を及ぼすおそれがあるものに関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
五 公害及び自然環境の保全上の支障が共に生ずるか又は生ずるおそれがある場合にこれらを共に防止するために必要な規制の措置
2 前項に定めるもののほか、国は、人の健康又は生活環境に係る環境の保全上の支障を防止するため、同項第一号又は第二号に掲げる措置に準じて必要な規制の措置を講ずるように努めなければならない。
(環境の保全上の支障を防止するための経済的措置)
第二十二条 国は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動を行う者がその負荷活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることを助長することにより環境の保全上の支障を防止するため、その負荷活動を行う者にその者の経済的な状況等を勘案しつつ必要かつ適正な経済的な助成を行うために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2  国は、負荷活動を行う者に対し適正かつ公平な経済的な負担を課すことによりその者が自らその負荷活動に係る環境への負荷の低減に努めることとなるように誘導することを目的とする施策が、環境の保全上の支障を防止するための有効性を期待され、国際的にも推奨されていることにかんがみ、その施策に関し、これに係る措置を講じた場合における環境の保全上の支障の防止に係る効果、我が国の経済に与える影響等を適切に調査し及び研究するとともに、その措置を講ずる必要がある場合には、その措置に係る施策を活用して環境の保全上の支障を防止することについて国民の理解と協力を得るように努めるものとする。この場合において、その措置が地球環境保全のための施策に係るものであるときは、その効果が適切に確保されるようにするため、国際的な連携に配慮するものとする。
(環境の保全に関する施設の整備その他の事業の推進)
第二十三条 国は、緩衝地帯その他の環境の保全上の支障を防止するための公共的施設の整備及び汚泥のしゅんせつ、絶滅のおそれのある野生動植物の保護増殖その他の環境の保全上の支障を防止するための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、下水道、廃棄物の公共的な処理施設、環境への負荷の低減に資する交通施設(移動施設を含む。)その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備及び森林の整備その他の環境の保全上の支障の防止に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 国は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
4 国は、前二項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。
(環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進)
第二十四条 国は、事業者に対し、物の製造、加工又は販売その他の事業活動に際して、あらかじめ、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷について事業者が自ら評価することにより、その物に係る環境への負荷の低減について適正に配慮することができるように技術的支援等を行うため、必要な措置を講ずるものとする。
2 国は、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、製品、役務等の利用が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全に関する教育、学習等)
第二十五条 国は、環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全に関する広報活動の充実により事業者及び国民が環境の保全についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。
(民間団体等の自発的な活動を促進するための措置)
第二十六条 国は、事業者、国民又はこれらの者の組織する民間の団体が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全に関する活動が促進されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第二十七条 国は、第二十五条の環境の保全に関する教育及び学習の振興並びに前条の民間団体等が自発的に行う環境の保全に関する活動の促進に資するため、個人及び法人の権利利益の保護に配慮しつつ環境の状況その他の環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するように努めるものとする。
(調査の実施)
第二十八条 国は、環境の状況の把握、環境の変化の予測又は環境の変化による影響の予測に関する調査その他の環境を保全するための施策の策定に必要な調査を実施するものとする。
(監視等の体制の整備)
第二十九条 国は、環境の状況を把握し、及び環境の保全に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、観測、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。
(科学技術の振興)
第三十条 国は、環境の変化の機構の解明、環境への負荷の低減並びに環境が経済から受ける影響及び経済に与える恵沢を総合的に評価するための方法の開発に関する科学技術その他の環境の保全に関する科学技術の振興を図るものとする。
2 国は、環境の保全に関する科学技術の振興を図るため、試験研究の体制の整備、研究開発の推進及びその成果の普及、研究者の養成その他の必要な措置を講ずるものとする。
(公害に係る紛争の処理及び被害の救済)
第三十一条 国は、公害に係る紛争に関するあっせん、調停その他の措置を効果的に実施し、その他公害に係る紛争の円滑な処理を図るため、必要な措置を講じなければならない。
2 国は、公害に係る被害の救済のための措置の円滑な実施を図るため、必要な措置を講じなければならない。
第六節 地球環境保全等に関する国際協力等
(地球環境保全等に関する国際協力等)
第三十二条 国は、地球環境保全に関する国際的な連携を確保することその他の地球環境保全に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるほか、開発途上にある海外の地域の環境の保全及び国際的に高い価値があると認められている環境の保全であって人類の福祉に貢献するとともに国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものに資するための支援を行うことその他の開発途上地域の環境の保全等に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2 国は、地球環境保全及び開発途上地域の環境の保全等に関する国際協力について専門的な知見を有する者の育成、本邦以外の地域の環境の状況その他の地球環境保全等に関する情報の収集、整理及び分析その他の地球環境保全等に関する国際協力の円滑な推進を図るために必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(監視、観測等に係る国際的な連携の確保等)
第三十三条 国は、地球環境保全等に関する環境の状況の監視、観測及び測定の効果的な推進を図るための国際的な連携を確保するように努めるとともに、地球環境保全等に関する調査及び試験研究の推進を図るための国際協力を推進するように努めるものとする。
(地方公共団体又は民間団体等による活動を促進するための措置)
第三十四条 国は、地球環境保全等に関する国際協力を推進する上で地方公共団体が果たす役割の重要性にかんがみ、地方公共団体による地球環境保全等に関する国際協力のための活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
2 国は、地球環境保全等に関する国際協力を推進する上で民間団体等によって本邦以外の地域において地球環境保全等に関する国際協力のための自発的な活動が行われることの重要性にかんがみ、その活動の促進を図るため、情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
(国際協力の実施等に当たっての配慮)
第三十五条 国は、国際協力の実施に当たっては、その国際協力の実施に関する地域に係る地球環境保全等について配慮するように努めなければならない。
2 国は、本邦以外の地域において行われる事業活動に関し、その事業活動に係る事業者がその事業活動が行われる地域に係る地球環境保全等について適正に配慮することができるようにするため、その事業者に対する情報の提供その他の必要な措置を講ずるように努めるものとする。
第七節 地方公共団体の施策
第三十六条 地方公共団体は、第五節に定める国の施策に準じた施策及びその他のその地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた環境の保全のために必要な施策を、これらの総合的かつ計画的な推進を図りつつ実施するものとする。この場合において、都道府県は、主として、広域にわたる施策の実施及び市町村が行う施策の総合調整を行うものとする。
第八節 費用負担等
(原因者負担)
第三十七条 国及び地方公共団体は、公害又は自然環境の保全上の支障を防止するために国若しくは地方公共団体又はこれらに準ずる者により実施されることが公害等に係る支障の迅速な防止の必要性、事業の規模その他の事情を勘案して必要かつ適切であると認められる事業が公的事業主体により実施される場合において、その事業の必要を生じさせた者の活動により生ずる公害等に係る支障の程度及びその活動がその公害等に係る支障の原因となると認められる程度を勘案してその事業の必要を生じさせた者にその事業の実施に要する費用を負担させることが適当であると認められるものについて、その事業の必要を生じさせた者にその事業の必要を生じさせた限度においてその事業の実施に要する費用の全部又は一部を適正かつ公平に負担させるために必要な措置を講ずるものとする。
(受益者負担)
第三十八条 国及び地方公共団体は、自然環境を保全することが特に必要な区域における自然環境の保全のための事業の実施により著しく利益を受ける者がある場合において、その者にその受益の限度においてその事業の実施に要する費用の全部又は一部を適正かつ公平に負担させるために必要な措置を講ずるものとする。
(地方公共団体に対する財政措置等)
第三十九条 国は、地方公共団体が環境の保全に関する施策を策定し、及び実施するための費用について、必要な財政上の措置その他の措置を講ずるように努めるものとする。
(国及び地方公共団体の協力)
第四十条 国及び地方公共団体は、環境の保全に関する施策を講ずるにつき、相協力するものとする。
(事務の区分)
第四十条の二 第十六条第二項の規定により都道府県又は市が処理することとされている事務(政令で定めるものを除く。)は、地方自治法第二条第九項第一号に規定する第一号法定受託事務とする。
第三章 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関等
第一節 環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関
(中央環境審議会)
第四十一条 環境省に、中央環境審議会を置く。
2 中央環境審議会は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 環境基本計画に関し、第十五条第三項に規定する事項を処理すること。
二 環境大臣又は関係大臣の諮問に応じ、環境の保全に関する重要事項を調査審議すること。
三 自然公園法、農用地の土壌の汚染防止等に関する法律、自然環境保全法、動物の愛護及び管理に関する法律、瀬戸内海環境保全特別措置法、公害健康被害の補償等に関する法律、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律、ダイオキシン類対策特別措置法、循環型社会形成推進基本法、食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律、使用済自動車の再資源化等に関する法律、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律、石綿による健康被害の救済に関する法律、生物多様性基本法及び愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律によりその権限に属させられた事項を処理すること。
3 中央環境審議会は、前項に規定する事項に関し、環境大臣又は関係大臣に意見を述べることができる。
4 前二項に定めるもののほか、中央環境審議会の組織、所掌事務及び委員その他の職員その他中央環境審議会に関し必要な事項については、政令で定める。
(都道府県の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十三条 都道府県は、その都道府県の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置く。
2 前項の審議会その他の合議制の機関の組織及び運営に関し必要な事項は、その都道府県の条例で定める。
(市町村の環境の保全に関する審議会その他の合議制の機関)
第四十四条 市町村は、その市町村の区域における環境の保全に関して、基本的事項を調査審議させる等のため、その市町村の条例で定めるところにより、環境の保全に関し学識経験のある者を含む者で構成される審議会その他の合議制の機関を置くことができる。
第二節 公害対策会議
(設置及び所掌事務)
第四十五条 環境省に、特別の機関として、公害対策会議を置く。
2 会議は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 公害の防止に関する施策であって基本的かつ総合的なものの企画に関して審議し、及びその施策の実施を推進すること。
二 前号に掲げるもののほか、他の法令の規定によりその権限に属させられた事務
(組織等)
第四十六条 会議は、会長及び委員をもって組織する。
2 会長は、環境大臣をもって充てる。
3 委員は、内閣官房長官、関係行政機関の長及び内閣府設置法 第九条第一項に規定する特命担当大臣のうちから、環境大臣の申出により、内閣総理大臣が任命する。
4 会議に、幹事を置く。
5 幹事は、関係行政機関の職員のうちから、環境大臣が任命する。
6 幹事は、会議の所掌事務について、会長及び委員を助ける。
7 前各項に定めるもののほか、会議の組織及び運営に関し必要な事項は、政令で定める。



エコツーリズム推進法
(目的)
第一条 この法律は、エコツーリズムが自然環境の保全、地域における創意工夫を生かした観光の振興及び環境の保全に関する意識の啓発等の環境教育の推進において重要な意義を有することにかんがみ、エコツーリズムについての基本理念、政府による基本方針の策定その他のエコツーリズムを推進するために必要な事項を定めることにより、エコツーリズムに関する施策を総合的かつ効果的に推進し、もって現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において自然観光資源とは、次に掲げるものをいう。
一 動植物の生息地又は生育地その他の自然環境に係る観光資源
二 自然環境と密接な関連を有する風俗慣習その他の伝統的な生活文化に係る観光資源
2 この法律においてエコツーリズムとは、観光旅行者が、自然観光資源について知識を有する者から案内又は助言を受け、当該自然観光資源の保護に配慮しつつ当該自然観光資源と触れ合い、これに関する知識及び理解を深めるための活動をいう。
3 この法律において特定事業者とは、観光旅行者に対し、自然観光資源についての案内又は助言を業として行う者をいう。
4 この法律において土地の所有者等とは、土地若しくは木竹の所有者又は土地若しくは木竹の使用及び収益を目的とする権利、漁業権若しくは入漁権を有する者をいう。
(基本理念)
第三条 エコツーリズムは、自然観光資源が持続的に保護されることがその発展の基盤であることにかんがみ、自然観光資源が損なわれないよう、生物の多様性の確保に配慮しつつ、適切な利用の方法を定め、その方法に従って実施されるとともに、実施の状況を監視し、その監視の結果に科学的な評価を加え、これを反映させつつ実施されなければならない。
2 エコツーリズムは、特定事業者が自主的かつ積極的に取り組むとともに、観光の振興に寄与することを旨として、適切に実施されなければならない。
3 エコツーリズムは、特定事業者、地域住民、特定非営利活動法人等、自然観光資源又は観光に関し専門的知識を有する者等の地域の多様な主体が連携し、地域社会及び地域経済の健全な発展に寄与することを旨として、適切に実施されなければならない。
4 エコツーリズムの実施に当たっては、環境の保全についての国民の理解を深めることの重要性にかんがみ、環境教育の場として活用が図られるよう配慮されなければならない。
(基本方針)
第四条 政府は、基本理念にのっとり、エコツーリズムの推進に関する基本的な方針を定めなければならない。
2 基本方針には、次の事項を定めるものとする。
一 エコツーリズムの推進に関する基本的方向
二 次条第一項に規定するエコツーリズム推進協議会に関する基本的事項
三 次条第二項第一号のエコツーリズム推進全体構想の作成に関する基本的事項
四 第六条第二項のエコツーリズム推進全体構想の認定に関する基本的事項
五 生物の多様性の確保等のエコツーリズムの実施に当たって配慮すべき事項その他エコツーリズムの推進に関する重要事項
3 環境大臣及び国土交通大臣は、あらかじめ文部科学大臣及び農林水産大臣と協議して基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 環境大臣及び国土交通大臣は、基本方針の案を作成しようとするときは、あらかじめ、広く一般の意見を聴かなければならない。
5 環境大臣及び国土交通大臣は、第三項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、基本方針を公表しなければならない。
6 基本方針は、エコツーリズムの実施状況を踏まえ、おおむね五年ごとに見直しを行うものとする。
(エコツーリズム推進協議会)
第五条 市町村は、当該市町村の区域のうちエコツーリズムを推進しようとする地域ごとに、次項に規定する事務を行うため、当該市町村のほか、特定事業者、地域住民、特定非営利活動法人等、自然観光資源又は観光に関し専門的知識を有する者、土地の所有者等その他のエコツーリズムに関連する活動に参加する者並びに関係行政機関及び関係地方公共団体からなるエコツーリズム推進協議会を組織することができる。
2 協議会は、次の事務を行うものとする。
一 エコツーリズム推進全体構想を作成すること。
二 エコツーリズムの推進に係る連絡調整を行うこと。
3 前項第一号に規定するエコツーリズム推進全体構想には、基本方針に即して、おおむね次の事項を定めるものとする。
一 エコツーリズムを推進する地域
二 エコツーリズムの対象となる主たる自然観光資源の名称及び所在地
三 エコツーリズムの実施の方法
四 自然観光資源の保護及び育成のために講ずる措置
五 協議会に参加する者の名称又は氏名及びその役割分担
六 その他エコツーリズムの推進に必要な事項
4 市町村は、その組織した協議会が全体構想を作成したときは、遅滞なく、これを公表するよう努めるとともに、主務大臣に報告しなければならない。
5 前項の規定は、全体構想の変更又は廃止について準用する。
6 特定事業者等は、市町村に対し、協議会を組織することを提案することができる。この場合においては、基本方針に即して、当該提案に係る協議会が作成すべき全体構想の素案を作成して、これを提示しなければならない。
7 特定事業者等で協議会の構成員でないものは、市町村に対して書面でその意思を表示することによって、自己を当該市町村が組織した協議会の構成員として加えるよう申し出ることができる。
8 前各項に定めるもののほか、協議会の組織及び運営に関して必要な事項は、協議会が定める。
9 協議会の構成員は、相協力して、全体構想の実施に努めなければならない。
(全体構想の認定)
第六条 市町村は、その組織した協議会が全体構想を作成したときは、主務省令で定めるところにより、当該全体構想について主務大臣の認定を申請することができる。
2 主務大臣は、前項の規定による認定の申請があった全体構想が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をするものとする。
一 基本方針に適合するものであること。
二 自然観光資源の保護及び育成のために講ずる措置その他の全体構想に定める事項が確実かつ効果的に実施されると見込まれるものであること。
3 主務大臣は、二以上の市町村から共同して第一項の規定による認定の申請があった場合において、自然的経済的社会的条件からみて、当該市町村の区域において一体としてエコツーリズムを推進することが適当であると認めるときは、当該申請に係る全体構想を一体として前項の認定をすることができる。
4 主務大臣は、第二項の認定をしたときは、その旨を公表しなければならない。
5 市町村は、その組織した協議会が第二項の認定を受けた全体構想を変更しようとするときは、主務省令で定めるところにより、当該変更後の全体構想について主務大臣の認定を受けなければならない。
6 主務大臣は、第二項の認定を受けた全体構想が基本方針に適合しなくなったと認めるとき、又は認定全体構想に従ってエコツーリズムが推進されていないと認めるときは、その認定を取り消すことができる。
7 第二項及び第四項の規定は第五項の変更の認定について、第四項の規定は前項の規定による認定の取消しについて準用する。
(認定全体構想についての周知等)
第七条 主務大臣は、インターネットの利用その他の適切な方法により、エコツーリズムに参加しようとする観光旅行者その他の者に認定全体構想の内容について周知するものとする。
2 国の行政機関及び関係地方公共団体の長は、認定全体構想を作成した協議会の構成員である特定事業者が当該認定全体構想に基づくエコツーリズムに係る事業を実施するため、法令の規定による許可その他の処分を求めたときは、当該エコツーリズムに係る事業が円滑かつ迅速に実施されるよう、適切な配慮をするものとする。
(特定自然観光資源の指定)
第八条 全体構想について第六条第二項の認定を受けた市町村の長は、認定全体構想に従い、観光旅行者その他の者の活動により損なわれるおそれがある自然観光資源であって、保護のための措置を講ずる必要があるものを、特定自然観光資源として指定することができる。ただし、他の法令により適切な保護がなされている自然観光資源として主務省令で定めるものについては、この限りでない。
2 市町村長は、前項の指定をしようとするときは、あらかじめ、当該特定自然観光資源の所在する区域の土地の所有者等の同意を得なければならない。
3 市町村長は、第一項の指定をするときは、その旨、当該特定自然観光資源の名称及び所在する区域並びにその保護のために講ずる措置の内容を公示しなければならない。
4 市町村長は、第一項の指定をしたときは、当該特定自然観光資源の所在する区域内にこれを表示する標識を設置しなければならない。
5 市町村長は、第一項の指定をした場合において、当該特定自然観光資源が同項ただし書の主務省令で定める自然観光資源に該当するに至ったときその他その後の事情の変化によりその指定の必要がなくなり、又はその指定を継続することが適当でなくなったと認めるときは、その指定を解除しなければならない。
6 市町村長は、前項の規定による指定の解除をするときは、その旨を公示しなければならない。
(特定自然観光資源に関する規制)
第九条 特定自然観光資源の所在する区域内においては、何人も、みだりに次に掲げる行為をしてはならない。
一 特定自然観光資源を汚損し、損傷し、又は除去すること。
二 観光旅行者その他の者に著しく不快の念を起こさせるような方法で、ごみその他の汚物又は廃物を捨て、又は放置すること。
三 著しく悪臭を発散させ、音響機器等により著しく騒音を発し、展望所、休憩所等をほしいままに占拠し、その他観光旅行者その他の者に著しく迷惑をかけること。
四 前三号に掲げるもののほか、特定自然観光資源を損なうおそれのある行為として認定全体構想に従い市町村の条例で定める行為
2 市町村の当該職員は、特定自然観光資源の所在する区域内において前項各号に掲げる行為をしている者があるときは、その行為をやめるよう指示することができる。
3 前項の職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
第十条 市町村長は、認定全体構想に従い、第八条第一項の規定により指定した特定自然観光資源が多数の観光旅行者その他の者の活動により著しく損なわれるおそれがあると認めるときは、主務省令で定めるところにより、当該特定自然観光資源の所在する区域への立入りにつきあらかじめ当該市町村長の承認を受けるべき旨の制限をすることができる。ただし、他の法令によりその所在する区域への立入りが制限されている特定自然観光資源であって主務省令で定めるものについては、この限りでない。
2 前項の規定による制限がされたときは、同項の承認を受けた者以外の者は、当該特定自然観光資源の所在する区域に立ち入ってはならない。ただし、非常災害のために必要な応急措置を行うために立ち入る場合及び通常の管理行為、軽易な行為その他の行為であって主務省令で定めるものを行うために立ち入る場合については、この限りでない。
3 第一項の承認は、立ち入ろうとする者の数について、市町村長が定める数の範囲内において行うものとする。
4 市町村の当該職員は、第二項の規定に違反して当該特定自然観光資源の所在する区域に立ち入る者があるときは、当該区域への立入りをやめるよう指示し、又は当該区域から退去するよう指示することができる。
(活動状況の公表)
第十一条 主務大臣は、毎年、協議会の活動状況を取りまとめ、公表しなければならない。
(活動状況の報告)
第十二条 主務大臣は、市町村に対し、その組織した協議会の活動状況について報告を求めることができる。
(技術的助言)
第十三条 主務大臣は、広域の自然観光資源の保護及び育成に関する活動その他の協議会の活動の促進を図るため、協議会の構成員に対し、必要な技術的助言を行うものとする。
(情報の収集等)
第十四条 主務大臣は、自然観光資源の保護及び育成を図り、並びに自然観光資源についての案内又は助言を行う人材を育成するため、エコツーリズムの実施状況に関する情報の収集、整理及び分析並びにその結果の提供を行うものとする。
(広報活動等)
第十五条 国及び地方公共団体は、広報活動等を通じて、エコツーリズムに関し、国民の理解を深めるよう努めるものとする。
(財政上の措置等)
第十六条 国及び地方公共団体は、エコツーリズムを推進するために必要な財政上の措置その他の措置を講ずるよう努めるものとする。
(エコツーリズム推進連絡会議)
第十七条 政府は、環境省、国土交通省、文部科学省、農林水産省その他の関係行政機関の職員をもって構成するエコツーリズム推進連絡会議を設け、エコツーリズムの総合的かつ効果的な推進を図るための連絡調整を行うものとする。
(主務大臣等)
第十八条 この法律における主務大臣は、環境大臣、国土交通大臣、文部科学大臣及び農林水産大臣とする。
2 この法律における主務省令は、環境大臣、国土交通大臣、文部科学大臣及び農林水産大臣の発する命令とする。




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